2020年からの授業はどうあるべきか?〜「新しい学力」を考える

これからの学力について、どのような力を育てるべきか?ということについてはよく耳にするようになってきたのではないでしょうか。

今回は「思考コード」をもとに、「新しい学力」とは何なのか、そして、それを身につけるための授業や教師の仕事がどうあるべきかを考えてみたいと思います。

目次

「思考コード」を授業デザインのツールとして使う

『2020年からの新しい学力』(石川一郎 SB新書)では「想像力・デザイン力・自分軸」という三つが挙げられています。

『2020年からの新しい学力』
(石川一郎 著 SB新書)

なぜこの三つなのかということについてはもちろん本書で述べられています。ですが、教員目線で読むと、新しい学力そのものよりも印象的だったのは「思考コード」を授業デザインのツールとして使うという部分です。

「思考コード」を使うと、自分の授業がどういった学力を伸ばそうとしているのかを可視化することができます。また、今までの受験勉強では重視されてこなかった内容を授業で展開していこうとしたときの授業設計の手助けにもなります。

思考コードとは

思考コードとは、横にA軸(知識)、B軸(思考)、C軸(創造)をとり、縦に単純・複雑・変容の三つの軸をとることで9マスのマトリクスをつくるコード表です。

本書の中では「ザビエル問題」でわかりやすく説明されています。特に横のA軸からC軸というのが新しい学力を考えるうえで重要視されています。

画像提供:首都圏模試センター

本書ではC軸に強く焦点が当てられています。確かに、A軸・B軸とC軸の間には大きな隔たりが存在しているな。というのが小中高と教えてきた私の実感です。どういうことかというと、C軸の内容が授業で扱われる場合、ほとんど「発展的な内容」といわれるものです。これは生徒にとっても教員にとっても「余裕があればできたらいいこと」として扱われがちです。

積み上げ型の学力観を疑う

C軸の内容が「発展的な内容」とか「余裕があればやる内容」ととらえられるのはまさに、旧来の積み上げ型の学力観を持っているからです。

その時間で何か明確に身に着ける知識があり、授業では一時間に身に着けさせる指導事項がある。この前提は「学ぶべきもの」が最初にあってそれを順序良く教え込んでいくことが教育であるという考え方の上に成り立っています。

授業設計は本来逆向きで、C軸を中心に行う方がよいのです。そのC軸を行うためにB軸が必要になるし、A軸は当然知っていなければならないと思って学ぶことになるのだろうと思います。こう考えると「新しい学力」とは実は学びの方向性を今までと逆向きにしようとしていることだというようにも読めてきます。

また、生徒の軸がAの知識軸にあると、Cの創造軸の話を受け取るレセプターが働かないことがあります。教員がいくら面白い「発展的な内容」を展開しても、大事なことは「定期テストに出る内容」となってC軸の話は「余談」として扱われることになってしまうのです。そして社会に出て創造軸を要求されはじめて、「A軸や、よくてB軸しか扱わない」学校の勉強は役に立たないと思ってしまうのではないでしょうか。

思考コードを使い、C軸を中心において授業を設計することができれば、今の授業は軸をどこにおいているか説明することができます。逆向きに設計されていることの理解も得やすいと思います。そうすれば生徒と教員の前提をそろえることも今よりはできるようになるでしょう。(もちろん評価をC軸中心に置く必要は出てきますが)

画像提供:首都圏模試センター

社会の変化に対応できる人を育てるには

今、新しい学力を測る入試改革が話題になっています。今までやってきたことで対応できるという論調もよく目にします。大学入試だけに目を向ければ確かにそうかもしれません。でもこれからの社会の変化に対応できる人を育てようとしたら本当にそれでいいのでしょうか。

大学入試改革という改革を追いかけていくよりも、自分で状況を判断して、社会の変化に沿った教育を提供していこうとすることが重要だということを、本書を読みながら考えました。まさに教員にとってC軸で動くことを求められているのだと思います。

ぜひ本書を手に取ってみて「新しい学力」やそれを身に着けることのできる授業について考えてみてください。(森川大地)

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