新たな教育に挑戦する人たち!〜イエナプランとの出会いが私を変えた〜part2

教育に真剣に向き合い、新たなカタチを模索し、挑戦する−−。
HALOMYでは、そんな挑戦者たちの活動をご紹介していきたいと思います。
前回のpart1に続き、イエナプランに挑戦する川崎知子さんをご紹介します!
1週間のオランダ研修から帰ってきた川崎さんは、日本でどんなチャレンジをしたのでしょうか。

目次

授業は机をコの字型にして

−− 帰国後、クラス運営にどのようにイエナプランを取り入れたのですか?

当時、私は2年生の担任でした。
まず、机の並びを全員が黒板に向かうスタイルから、グループごとのかたまりを作ってそれをコの字型に並べるスタイルに変えました。そして、毎朝の活動にサークル対話を取り入れました。 時間割も自分たちで作ることに挑戦しました。

授業のほとんどをコの字型で行うことにしたのですが、そのスタイルだと、私の指示で子どもたちが一斉に作業をするということが物理的に不可能になります。例えば、“黒板を見ながら一斉に漢字を書き写す”みたいなことは、全員が黒板に向かって座っていればやりやすいですけど、コの字型では横向きで座っている子もいるのでやりにくいですよね。そういう、やりにくい状態をあえて作ったんです。そもそも、板書をただノートに書き写す作業は無駄でしかないと思っていて(笑)。ノートは自分のためのメモなので、書きたい子は自分の考えを書けばいいし、書くのが苦手な子は少ししか書けなくてもいいと思っています。それよりも、仲間の顔を見ながら話し合った方が深い学びになります

−− 子どもたちに変化は見られましたか?

不思議と子どもたちの発言が活発になりました。とりわけ、以前の机の並びでは絶対に発言しなかった子がたくさん発言するようになりました。なんでだろう?と思って聞いたら、全員が前を向くスタイルでの発言はとても緊張するけど、こちらのスタイルだと緊張しないのだと。子どもたちは、手を挙げて発言しなきゃいけないとか、起立して大きな声で発言しなきゃいけないとかいう暗黙のルールみたいなものを感じていたようなのですが、このスタイルだと距離が近くなるし、みんなの顔が見えるのでリラックスできます。何より、丸くなることで“みんな平等”という感覚になり、それが安心感に繋がるようです。もちろん私も丸の一部となり、教えるというよりはただ見守る感じです。

机の並びを変え、サークル対話ができるようにベンチも設置

同調圧力が強い教育現場

−− 周りの教員の反応はいかがでしたか?

一部からは、「前向きの席の方が集中できるのでは?」という意見もありました。でも、大半は黙認でしたね。

−− 黙認ということは、心の中では反対していたということですか?それとも、賛成だけど、声には出さないということなんでしょうか?

もちろん、心の中では反対の人もいたとは思います。でも、それ以上に教員の世界って同調圧力が強いんですよ(苦笑)。残念ながら、周りの反応を恐れて、声を大にしては言えないような空気があります。だから、前例のないことについて称賛の声を上げたり、自分の考えを言ったりすること自体が勇気の要ることなんです。若手の同僚からは、「先生のやっていることが羨ましいです。でも、私にはやる勇気がない。どうしたらできるんですか?」という相談も何件か受けました。

−− 保護者はどうでしたか?

ありがたいことに、反対の声はなかったです。2年生を担任した翌年は引き続き3年生を担任したのですが、子どもたちは自分のペースで学習することが上手になり、成果が確実に現れてきました

一つ微笑ましいエピソードがあるのですが、クラスにすごくおとなしい子がいたんですね。その子のお母さんから個人面談の際にこう言われたんです。

「うちの子が『“フィンランド式”の勉強がすっごく楽しい!』って言うんです!!今までは学校のことを報告する子じゃなかったのに、本当にありがとうございます!」って。

「フィンランドじゃなくてオランダですけどー!」ってツッコミを入れつつも(笑)、話してくれたことがとても嬉しい!とお伝えしました。

子どもたちは自分のペースで勉強できるようになり、教室はイキイキとした雰囲気に

日本の学校教育にイエナプランは取り入れられるか?

−− 日本の学校が本格的にイエナプランを取り入れようとした時に、何が障壁になると思いますか?

大きく3つくらいあるかなと思っています。

まず一つ目として、オランダではうまくいっているものの、新たな教育を受けた子が20年後にどんな大人になるのかは現時点では正直わからない。そんな中で新しいものを取り入れるのって、ある意味リスクがありますよね。みんなリスクは取りたくない変化を恐れる。そういうマインドが一番の障壁だと思います。そして、その背景にあるのは、「教育に失敗は許されない」という社会の呪縛みたいなものです。

2つ目に、教員に対する体系的な研修も必要になってきますよね。「イエナプランを取り入れるから、みなさんやってくださいね!」と言ったところで絶対にできません。イエナプランでは、教員は教える人(=ティーチャー)ではなくファシリテーターなので、子どもたちを導いていくための研修は欠かせません。また、教員こそ主体的に学んでいく必要があると思うのですが、今はそういう教員研修の場は一切用意されていないんですよ。
でも、一方で、少しずつ変化も出てきているように思います。実は、この春から日本イエナプラン教育協会の理事になりまして、日本でも研修をやろうという動きはあります。さらに、今までもオランダでたくさんの方が研修を受けて、それぞれの方が現場でとても頑張っていることは大きな声で叫んでおきたいです!(笑)

最後に3つ目として、学びの本質が何なのか?幸せの本質が何なのか?ということです。テストで良い点を取ったり、受験に合格したり、いい会社に入ったりすることでしか学びを計れないうちは難しい気がします。
だから、人や社会の豊かさ、学びとは何かについて、教育関係者はもとより社会全体で今いちど考えていけたらいいなって、そう思っています!

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次回はいよいよ最終回!ご家族でオランダに渡った川崎さんの現地での活動などをご紹介します。お楽しみに!!

川崎 知子さん

元教員。東京都の公立小学校で担任として11年間勤務。
2009年にイエナプランと出会う。2011年より日本イエナプラン教育協会の千葉支部としての勉強会「イエナカフェ」を開始し、墨田区や江東区では親向けにも開催。2015年にはオランダでのイエナプラン研修に参加し、イエナプラン校で子どもたちが自然に学ぶ姿に改めて感銘を受ける。2017年9月、家族でオランダに移住。現在、オランダでイエナラボを主宰しながら研究を続けている。日蘭イエナプラン専門教員資格取得。日本イエナプラン教育協会理事。

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