教員レポート〜教員が感じる“今の教育の課題”とは?!<後編>

6月から8月にかけて埼玉県坂戸市で開催された「教育と子育ての未来を考えるフォーラム」。
主催者へのインタビューによって、教員が感じる“今の教育の課題”が見えてきました。
後編では、その課題感を各セッションにどう反映させたのか、企画の発起人である 筑波大付属坂戸高校教員の藤原亮治さんにお聞きました。
(ライター:森川大地)

目次

コンフォートゾーンを抜ける


第一回「中高生と考える『今』と『これから』の教育~グローカルの視点から~」
 白川寧々×瀬戸昌宜のトークセッション
 高校生のプレゼンテーション


−− 白川寧々さん×瀬戸昌宜さんのトークセッションで期待したことは何でしょう?

「保護者も教員もコンフォートゾーンを抜けること」を大きな目的にしました。自分たちが見ている教育と、広い視野で世界を見てきた後に見える今の日本の教育の見え方の違いを知ることで、大きなインパクトがあるのではないかと思ったのです。

自分たちが知らないことを知った後に、自分たちの中にあった言葉にならない思いや違和感がどういった形で言語化されるのか。今までモヤモヤしていたけど、ハンマーで撃たれるような衝撃を受けた後にそれがどんな風に言語化されていくのか。一歩自分の殻を打ち破る。というよりは外から強制的に殻を打ち破られて、ひび割れたところからのぞいたら光が見える。そんなことが起こるだろうという思いがありました。

そして、そういう経験をすることで、コンフォートゾーンを抜けて新たなコミュニティが形成されるのではないかという期待もありました。圧倒的な経験や経歴を持った人たちが言葉を発することによって、私たちが発するのでは決して伝わらなかったことが共通言語として用いられてくる可能性を感じました。

白川寧々さん×瀬戸昌宜さんのトークセッション

今あるものを再認識する


第二回「これからの幼小教育と子育てを考える」
 子どもが輝くSTEAM教育 野村泰朗
 子どもの発想力の共育法 三谷宏治
 パネルディスカッション 三谷宏治・野村泰朗・本田祐吾・奥隅一之・鈴木悦子


−− 三谷宏浩さん、野村泰朗さんの講演は幼小教育に焦点を当てたものでしたが、どんな内容だったのでしょう?

野村先生の講演では日常にある教育の手段やツールで思考を深めていくことを話してもらいました。今まで使っていた手段やツールが実はSTEAMだと再認識することで、形骸化しているものがちゃんと意味を持つようになります。STEAMだと言って新しいことをしなくても、今やっていることの価値を再認識するだけで、その実践の持つ意味や効果が変わってくるのです。そして、それを土台にプログラミング教育を実施していくことで、より機能するということを短い時間の中でしっかり伝えてもらえたと思います。

「子どもが輝くSTEAM教育」 野村泰朗さん

三谷さんの講演では「与えすぎないこと」がキーワードだったように思います。今あるものの中でどう工夫するか。子供が自分のやろうとしていることの価値をしっかり言語化して、親を含めた他人に伝えていくことの重要性を話してもらいました。
子どもは、与えれば与えるほど考えることができなくなる。紙コップ一つでもこんなに考えられるのに、親や祖父母がいろいろなものを与えることで、考えるための機会が奪われていってしまう。一人の人間として扱うことで、子どもは自立していく。子どもの時から生きていくということを大事にする。そういう話をしてもらえたと思います。

「子どもの発想力の共育法」 三谷宏治さん

誰も取り残さない教育


第三回「誰も取り残さない教育を実現しよう」
 渡辺由美子×中山勇魚トークセッション


−− 渡辺由美子さんと中山勇魚さんのセッションでは福祉がテーマでしたね。

渡辺さんからは今の学校や貧困家庭を取り巻く社会課題の概要とキッズドアの取り組みについて伝えてもらえました。貧困というのは身近にあるようで実は実感が遠い世界です。知っているけれどその実態は本人たちやしっかり支援に入っている人たちでないと見えないことも多い。その実態を伝えてもらえました。

Chance For Allの中山さんには放課後でも大きな格差があるという視点を示してもらえたと思っています。本来子どもたちに届けたいはずの福祉が実はちゃんと届いていないのです。福祉が福祉になっていない。親のためではなくて、子どものための福祉という環境整備が必要です。
映像を交えて中山さんの学童の様子を伝えてもらいましたが、あの映像で見た雰囲気は言葉ではなかなか言い表せません…。「子どもたちが笑って過ごせる環境がどの場所にもあってほしい。」「当事者性をもって関わる大人を増やしたい。」「子どもたちの思いの共有ができる時間を作りたい。」そんなことを思いました。

「福祉」や「教育」という枠組みを飛び超えて連携できたらいいなと思うと同時に、違うジャンルの人たちが同じ場所に集まって協同する瞬間を作りたいと思っていたので、第三回でそういう場ができたことが本当によかったです!

渡辺由美子さん×中山勇魚さんトークセッション

ワークショップで地域の子どもたちに教育機会を

−− 今回、講演だけでなくワークショップも同時開催されましたね。

子ども向けのプログラミング教室や工作教室、レゴワークショップなど、様々な教室やワークショップを開催することで、普段教育情報のあまり入ってこないこの地域の子どもたちに教育機会を届けたいと思いました。その結果、保護者の方々からは喜びの声をいただき、とても嬉しく思っています。

また、ワークショップに限らず、全体として保護者の方たちの反応がよかったのが印象的でした。埼玉県の坂戸という小さな地域にこうした機会がなかったことを残念に思っていた人が多いということがよくわかりました。「坂戸で開催されたことが嬉しい!」という声をたくさんいただき、次に繋がるきっかけを作れたのではないかと思っています!

子ども向けのプログラミング教室
子どもたちが作ったレゴ!!

三回のフォーラムに参加して、登壇者の方たち、参加者の方たちの熱気や想いに影響を受けたのはもちろんのことですが、発案者の藤原さんがChance For Allの動画を見て涙を流し、それを見ていた生徒の感想が一番印象に残りました。

「一番の感動は、めちゃくちゃ怖い学校の先生が(学校で一番怖いと思っていました…)実はすごい熱い人だったことです。愛について普段は見せない涙を僕たちに見せてくれたのは本当に感動して僕も泣きそうに……実は自分が思っているよりも熱い大人は多いんじゃないか。という考えにもいきつけた。」

自分の住む地域の教育環境を嘆くのではなく、少しでも良くなるようにと行動を起こすことで本当に変化したのだなぁとこの感想を読んで思いました。

誰でも何かができるということ。その一歩を踏み出すことの大切さを感じ、そういう人が一人でも増えればいいなぁと思って一歩踏み出して書いているのがこの記事です。自分にできる小さなことを少しでも。(森川大地)

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