VUCAの時代を生きる子どもたちの教育

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は、まさにVUCAそのものだと言えるでしょう。VUCAの時代を生きる子どもたちに最も必要な力はなんでしょうか?

目次


近年言われたはじめた“VUCA”

ここ数年、VUCAという言葉を聞くことがとても多くなりました。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた造語で、ひとことで言うと「予測困難な」という意味です。

これまで何時間もかけて調べていたことや、何日もかけてやりとりしていたことが、スマホの登場によりわずか数分、いえ、もしかしたら数秒で済むようになりました。こうしたテクノロジーの進化は、世の中の仕組みやルールをめまぐるしく変化させ、私たちが置かれた社会は「将来の予測が困難な状態」、つまりVUCAの時代に突入したのです。

そして、2020年に入り、VUCAを加速させる出来事が起こりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行です。いつ終息するのかまったく予測がつかない状況は、まさにVUCAそのものだと言えるでしょう。


コロナで浮き彫りになったこととは

コロナの流行を受けて、日本では全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校が要請され、多くの学校で休校が決まりました。「要請」だったことから、教育委員会ごとに温度差が生じ、対応には多少の違いも見られました。また、ちょうど年度末にあたる時期だったために、多くの学校で「卒業式をどうするか?」という問題が発生しました。これまでは、「卒業式はおこなうもの」という“前提”があり、そのなかで「来賓は挨拶をするもの」「式は練習をして臨むもの」「式次第に沿って粛々とすすめられるもの」という“常識”が存在していたと思います。しかし、コロナによって、この前提や常識は見事に覆されました。いや、覆さなければ、解決の糸口がつかめない状況に陥ったのです。

4/7には7都府県を対象に緊急事態宣言が発令。そこに至るまでにもさまざまな意見が交錯し、苦しい意思決定を迫られたと思います。なぜ、これほどまでに意見がぶつかり合い、苦しい意思決定を余儀なくされるのかと言えば、とりもなおさず、先の見通しがつかない状況だからにほかなりません。

さらに、緊急事態宣言の全国への適用、そしてその後の延長措置を受けて、いまも多くの学校で休校が続いています。学校再開がいつになるのか予測困難な状況の中、「子どもたちの学びを止めないためにどうしたらよいか」という議論がさまざまなところでおこなわれるようになりました。これまでの「オンラインで授業ができるわけない」といった前提、「Wi-Fiやデバイスを持たない子どもが存在する限り、不平等となることはやるべきではない」といった常識にとらわれていては、もはや子どもたちの学びを保障できなくなるということに、多くの教員や保護者、関係者たちが気づきはじめたのです。その結果、前提や常識を取っ払い、「あるべき姿に近づけるためにはどうしたらよいか?」という方向にマインドセットが変わりはじめてきています。


VUCAの時代に必要とされる教育に向かって

「休校にするべきか?」「卒業式をどうおこなうべきか?」「子どもたちの学びをどうやって保障するか?」ーーーこれらの問いはすべて、唯一絶対の答えがあるものではない気がします。なぜなら、置かれた状況が違うすべての人にとって100点満点の解決法なんて存在し得ないからです。重要なことは、筋の良い問いを立て、その問いに対して、100%ではないけれど多くの人が「納得」できる解を導き出し、実行していくことではないでしょうか。そして、それこそが、VUCAの時代を生きる子どもたちに最も必要な力なのではないでしょうか。

これまでは、答えのある問いに対して、どれだけ速く正解を導き出せるかが大事でした。基本となっていたのは正解を量産するようなドリル型の学習スタイル。しかし、VUCAの時代にあっては、そのスタイルだけではサバイブできないということ、自ら問いを立てる力が必要だということを、新型コロナウイルスの流行が教えてくれたと思います。

私たちはかねてより、「VUCAの時代を生きるための教育とは?」を模索してきました。その考えは一部の人にしか届かないこともありました。しかし、コロナ禍のいま、誰もが予測困難な状況に対峙し、この問いに向き合わざるを得なくなっています。

ポストコロナの世界もまた、予測困難なことが続くでしょう。そして、その流れが加速することはあっても、元に戻ることはないでしょう。子どもたちに必要なのは、この予測困難な社会をサバイブし、その中で社会をよりよくしていくための経験とスキルです。だからこそ、教育を通じてすべての子どもたちの可能性を引き出し、育てていくことが大切なのではないでしょうか。


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